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建設不動産業の管理職育成を研修テーマの多さではなく現場に届く道筋で決める

業界別活用法12
著者: アーテリジェンス編集部
建設不動産業の管理職育成を研修テーマの多さではなく現場に届く道筋で決めるの内容を表すビジネス研修のイメージ

# 建設不動産業の管理職育成を研修テーマの多さではなく現場に届く道筋で決める

最終更新日:2026年9月23日

人材育成への投資を、経営戦略と結びつけて説明してほしい。人的資本経営の考え方が広がるなかで、そう求められる場面は確実に増えました。建設不動産業でも、営業人材の育成や管理職育成が経営計画の中で語られるようになっています。

一方で、育成を担当する立場から一年を見渡すと、同じ年度に扱うテーマがいくつも並びます。資格と法令知識の更新、管理業務のデジタル化、生成AIの活用、そして管理職育成。経営会議のたびに新しいテーマが加われば、そのすべてに何らかの手を打つよう求められやすくなります。どれも必要に見えるため、優先順位をつける根拠が持ちにくいところです。テーマが並ぶこと自体は、事業が動いている証でもあります。ただ、何から手をつけるかを決める段になると、どれも落とせないという理由だけが残りやすくなります。それでは、建設不動産業の管理職育成をどう優先づけるのかを、育成が現場に届くまでの道筋という観点から探っていきましょう。

この記事の要点

  • 建設不動産業では複数の育成テーマが同時に並び、人事は毎年その入れ替えに追われている。
  • テーマを足すほど施策の数は増えるが、拠点の管理職に届く量は増えず、育成方針への信頼がむしろ薄れていく。
  • 優先順位は、テーマ同士の重要度を比べるのではなく、育成が現場に届くまでの経路の側から決めることができる。

育成テーマが増えるほど拠点長に届かなくなる構図

どれも落とせないという理由だけが残ったまま年度が始まると、人事の一年はどんな形になるのでしょうか。ここでは拠点を広げてきた企業を想定して、施策の数が増えるほど現場から遠ざかっていく流れを追います。

経営方針の刷新ごとに足される研修と人事の一年

例えば、全国に30拠点ほどを構え、売買仲介・賃貸仲介・賃貸管理を手がける企業があるとします。人事部で育成を担う課長は、中期経営計画が刷新されるたびに増えるテーマの扱いに困っています。管理職育成、宅地建物取引士の資格と法令知識の更新、管理業務のデジタル化、AI活用。経営会議のたびに、そこへ新しいテーマが加わります。

人事は、経営会議で挙がったテーマに合わせて新しい研修を年度ごとに追加します。予算が絞られた年には、既存の施策を一律に薄く縮小します。この手を取ると、経営の関心に速やかに応えた形が整い、社内で説明しやすい状態がその場で手に入ります。判断の根拠までは共有されませんが、年度の計画表は埋まります。

追加された研修は、拠点長を通して現場に降りていきます。拠点長(店長・営業課長級)は、自分の顧客の商談と成約を担いながら部下の指導も受け持つ位置にいて、育成の施策はこの人を通してしか現場に届きません。売買仲介・賃貸仲介では1月から3月に問い合わせ、物件の内見、契約が集中し、この時期に拠点を離れる余地はほとんど残りません。夕方、入社2年目の担当者から商談の進め方を相談されても、返ってくるのは「とにかく追客しよう」の一言です。見込み客への継続的な連絡(追客)そのものは欠かせない仕事ですが、次に何をするかまではそこから出てきません。

若手の手元には、研修の内容も指導の言葉も残りません。残るのは「また方針が変わった」という受け止めで、育成方針そのものへの信頼が少しずつ薄れていきます。同じ手を取る会社は、この業界では珍しくありません。

繁忙期の拠点長に残っている育成の時間

人手が足りないから届かないのでしょうか。それだけでは説明のつかないところがあります。育成テーマはいくらでも増やせます。けれども、それが現場に届くまでに必ず通る経路は、拠点長の指導場面ほぼ一本しかありません。そしてこの経路の太さは、施策を何本足しても変わりません

人手や時間が足りないという話とは別に、どれだけ通せる経路なのかを測らないままテーマの側だけを増やしていることが、届かない状態を続けさせているのかもしれません。今年その経路を何回通ったのか、手元の資料から答えられる会社はどれくらいあるでしょうか。施策の一覧には本数が並んでいても、受け取り口の側は数えられていないことが多いところです。

同じ形は、この業界だけで起きているわけではなさそうです。全国の事業所を対象にした調査では、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとした事業所が80.1%にのぼったと報告されています(*1)。この調査は特定の業種に限らず、事業所に尋ねた結果です。

一方で、業務から離れて行う研修を受けた正社員の割合は37.3%にとどまったという結果も出ています。業務から離れて行う研修とは、厚生労働省の調査で使われる区分で、通常の仕事から離れて受ける教育訓練を指します。手を打っている側の実感と、受け取る側の実感がかみ合っていない様子がうかがえます。そこから、施策の本数と届く量は別のものだと読み取れます。

管理職育成の優先順位を決める判断基準はどこにあるか

測らないまま太さを当てにしてきた経路に、まず名前をつけてみるとどうでしょうか。人事が決めた育成テーマが現場の社員に届くまでに必ず経由する道筋を、ここでは育成の通り道と呼ぶことにします。一般的な用語ではなく、この記事の整理として置く言い方です。

拠点展開する建設不動産業では、この通り道が拠点長の指導場面にほぼ一本化されています。そう捉えると、優先順位の決め方も変わってきます。テーマ同士の重要度を比べるのではなく、一本の通り道に年間で何を何回通せるかという受け皿の総量から決まる、という見方ができます。テーマを減らすことを勧める見方ではありません。通す順序と回数を先に決めておく、という提案です。

通すものには2種類あります。その期だけ入れ替わるものと、何期も変えずに繰り返すもの。後者を固定することが、育成方針の一貫性そのものになると考えてみるとどうでしょう。毎年の入れ替えが方針の揺れとして受け取られるのだとしたら、揺れない部分を先に決めておくという順番が立ちます。

先ほどの拠点長を、通り道の側から眺め直してみます。その年に足された研修が3本あっても、夕方に部下と向き合う数分間に持ち込める言葉は、1つか2つに限られます。比べるべきだったのは研修の重要度ではなく、その数分間に何を置くかだったという見方もできます。

建設不動産業では、繁忙期に拠点長を集められず、拠点ごとに指導の水準もばらつきます。通り道の太さは、業界の制約として最初から決まっているわけです。事業インパクトと緊急度でテーマを並べる進め方と分かれるのは、判断が割れたときの問い方にあります。どちらが重要かではなく、今期の通り道に入るかどうかで選べる点が、この見方の使いどころになります。

通り道を上司の指導場面に置くこの見方は、学びが現場に移る条件とも重なります。研修で学んだことが現場の行動に移るかどうかを扱った多くの研究を集めて集計した分析では、それが受講者本人の能力や意欲だけでなく、職場の環境や上司の支援、実践の機会に左右されると報告されています(*2)。対象は特定の業種や職種に限られません。

育成テーマを拠点長の指導場面の言葉に直す

通り道に何を通すかを決める段になると、テーマの名称のままでは足りません。ここからは、人事が手を動かす作業として、一覧の書き直しと年間の枠の押さえ方を順に見ていきます。

テーマを場面の言葉に置き換える

育成テーマを名称のまま拠点に降ろさず、「誰に」「どの場面で」「何と言うか」の3点に置き換えて、一覧をつくり直します。管理業務のデジタル化というテーマであれば、入社2年目の担当者が入力を後回しにした翌朝に、拠点長が記録の残し方をその場で1つだけ指示する、という形まで直す。ここまで書けていれば、拠点に渡したときに何をすればよいかが伝わります。

置き換えを試みて場面が書けないテーマは、どう扱えばよいでしょうか。現場に届く形がまだないということなので、今期は通り道に乗せず、翌期に回すと決めます。落とすのではなく、順番を後ろにするという判断です。一覧の上で決着がつくので、経営に説明するときにも同じ言葉が使えます。

年間の枠を先に押さえて繰り返す

年間の枠は、問い合わせと内見が集中する1月から3月を避けて、先に押さえます。空いたところに研修を入れるのではなく、枠を固定してから中身を決める順です。そのうえで、枠で扱うテーマのうち何期も繰り返すものと今期だけのものを分けて明示します。繰り返す側が決まっていれば、年度が替わっても拠点長が受け取る形は動きません。

枠の中では、拠点長が部下に次の一手を示す言い方を、実際に口に出して練習する機会を設けます。あの夕方の相談に、どの言葉で返すか。頭で理解したかどうかではなく、その言葉が出るかどうかを確かめる。資料を配って修了とする形との差は、ここに出ます。

これまでのやり方との差は、研修を1本増やす手間が、テーマ一覧を書き直す半日ほどの作業と、年間カレンダーを先に固定する判断に置き換わる点にあります。新しい費用が増えるというより、手をかける先が移ると考えるほうが近いところです。

拠点ごとの指導のばらつきが揃いはじめる

先に押さえた枠が2期、3期と回ったころ、拠点の様子は少しずつ動きはじめます。拠点長が部下に返す言葉が「とにかく追客しよう」から、次に何をいつまでにやるかを示す形へ変わっていくと、相談したあとに動ける若手が増えていく可能性が広がります。

テーマが入れ替わっても、現場が受け取る形は変わりません。研修を年度ごとに足し続けても届かなかったところに手が届きはじめ、社員が方針の揺れとして感じる機会も減っていくでしょう。人事の側でも、説明の言葉が変わってきます。施策の本数ではなく、通り道に何を通したかで育成を語れるようになり、経営への報告もその形に近づいていくはずです。

拠点長の指導場面が揃ってくると、次の段階も見えてきます。拠点ごとにうまくいった言い方を持ち寄る、という進み方です。スキルギャップの把握や研修設計の見直しも、テーマ単位ではなく通り道の中身を更新する作業として扱えるようになるでしょう。

拠点ごとに指導の水準がばらつくという事情は、テーマを場面の言葉に直して同じ枠で繰り返すうちに、拠点長が受け取る形が共通になって少しずつ縮まっていきます。一方で、繁忙期に拠点長を集める日程がとれないという事情は、この設計だけでは残ったままです。

繁忙期でも止まらない管理職研修の手段

枠を回し続けるには、集まれない時期をどう扱うかを決めておく必要があります。集合研修の形をとる管理職研修は、拠点長を1か所に集める日程が要ります。問い合わせと内見が集中する時期を避けると年に1回か2回に限られ、繰り返しの練習には向きません。節目で認識をそろえる場としては働きますが、毎月の指導場面を支えるには間隔が空きます。

eラーニングや通信教育は、知識の習得では効果が認識されている一方、学んだことを現場で実践したか、個人の行動が変わったかという点では効果認識が低いという調査結果が出ています(*3)。人事・人材教育部門の担当者に尋ねた調査です。日々の業務を通じた指導も選択肢になりますが、拠点長自身が忙しいほど精神論に寄りやすいところがあります。

そこで、時間と場所を選ばずに短時間で繰り返せる手段が要ります。AIビジネストレーニングは、繁忙期の夕方に部下から相談を受けた拠点長が次の一手と期限を示す、という場面をケースストーリーとして読むところから始められます。続けてAIロールプレイで実際に口に出して練習し、その場で改善点の振り返りを受ける形です。拠点長が自分の空き時間に短時間ずつ取り組めるため、集合の日程がとれないという事情に答えられます。

実際の事例をもとに自分が当事者だったらどうするかを考える学び方は、知識の定着と応用につながると一般にされています。頭で理解したかではなく言葉が出るかどうかを確かめるという確認も、この形なら枠の外で繰り返せます。

株式会社アーテリジェンスが提供するAIビジネストレーニング「ミチビカ」では、受講半年後に受講者の上司へ行った追跡アンケートで、行動変容が見られたとの回答が83%を超えています。当社が実施した調査で、受講者の自己申告ではなく上司による他者評価です。

集合研修との比較では、80%以上が「AIビジネストレーニングの方が優れている、または希望する」と回答しています。こちらも当社調べで、業種や研修テーマを限定しない全体の集計です。拠点長の指導場面を繰り返し練習する用途にも応用できる可能性があります。

運用の面では、音声を使うため静かな受講環境が必要になります。自宅や個室からの受講で対応でき、自社の営業マニュアルや既存の研修資料を取り込んだカスタマイズにも対応しています。通す中身が決まっていれば、手段はその形に合わせて選べます。拠点長の指導場面を軸に据えたい会社にはマネジメント研修のコースが合い、育成テーマの並べ直しから考えたい人事部には設計段階からの相談窓口が向いています。拠点長の指導場面を軸に育成テーマを並べ直したい方へ、現在の育成テーマ一覧をもとにした設計のご相談と、AIビジネストレーニングの体験コースのご案内を承っています。

明日の拠点会議から始められること

ここまでたどってきたなかで効いたのは、テーマを比べる前に、それが現場に届くまでの経路を先に見るという1点でした。手元に残るのは新しいテーマ一覧ではなく、誰にどの場面で何と言うかまで書き直された育成テーマの表と、繁忙期を避けて先に押さえた年間の枠です。管理職育成の優先順位は、この2枚の上でなら根拠を持って説明できます。

人事課長は、翌年度のテーマ一覧を場面の言葉に書き直しました。場面が書けなかった2つのテーマは、翌期に回しています。

拠点長のほうはどうでしょうか。繁忙期の夕方、入社2年目の担当者から相談を受けたとき、立ち話を5分の打ち合わせに切り替えました。前回の内見で聞き取れた条件を事実として挙げ、次の連絡を明日の何時までに入れるかをその場で決めます。担当者は翌朝、その約束どおりに動きました。拠点長は同じやり取りを、別の担当者にも繰り返しています。

テーマが並ぶ一覧を前に手が止まるのは、どれも落とせないと分かっているからこそです。その一覧から1つだけ選び、拠点長が明日の朝に部下へ言う一文に直す。そこから、優先順位の判断軸は動きはじめます。ぜひこの記事でご紹介した進め方は、人材育成の現場でご活用いただければ幸いです。自社のスタイルに合った研修やトレーニングをお探しの場合は、いつでもご相談ください。

参考にした調査・資料

監修:株式会社アーテリジェンス

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