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プラント工事の技術営業で顧客の信頼が積み上がる過程を人事がどう捉えるか

業界別活用法28
著者: アーテリジェンス編集部
プラント工事の技術営業で顧客の信頼が積み上がる過程を人事がどう捉えるかの内容を表すビジネス研修のイメージ

# プラント工事の技術営業で顧客の信頼が積み上がる過程を人事がどう捉えるか

最終更新日:2026年8月21日

人を育てるために使った費用や取り組みを、経営や投資家に向けて言葉で説明する。この作業が、多くの企業で当たり前のものになってきました。有価証券報告書のなかで人材育成に触れている企業は大半を占めるという集計も公表されています(*3)。有価証券報告書の「事業の状況」に書かれた記述を対象にした集計です。建設不動産業でも、人を育てた結果として何が変わったのかを言葉にする役割が、人事部に回ってきています。

設備工事やプラント建設の分野では、この説明がとりわけ難しくなります。営業を担うのは施工管理の経験を持つ担当者であることが多く、顧客との接点は受注前の見積説明や設計変更の協議から、工事中の条件調整、完成後の保守運用の相談まで長く続きます。引き合いから受注までに数か月から数年かかるため、営業担当の対応の良し悪しが売上として表れるのはかなり先になります。顧客と信頼関係を築く力が受注を左右する一方で、その力が育ったかどうかを短い期間で確かめる方法は見つかりません。営業研修を実施しても、手応えを説明する材料が受講後のアンケートしかない、という声が聞かれます。

営業部門の育成を預かる人事・人材育成の担当者であれば、この行き詰まりに心当たりがあるのではないでしょうか。それでは、長い案件のなかで顧客の信頼が積み上がる過程を人事がどう捉えればよいのか、研修から出てくる情報の位置づけという観点から探索していきましょう。

この記事の要点

  • 満足度と受講率を並べるだけでは、建設不動産業の長い案件のなかで人材育成がどう効いたかを読み取れない。
  • 研修ごとに設問も尺度も違う数字を同じ列に置いてしまうことが、意味を読み取れなくしている原因である。
  • 数字を成果の証明として扱うのではなく、案件が進む過程のどこを確かめるための情報かという位置づけで組み直すと、人事の手元に判断材料が残る。

満足度4.3点という報告に残っているもの

受講後のアンケートだけが手元にあるという状態は、報告の場に立ったときにいちばんはっきりと形になります。ここでは、経営会議で研修の効果を問われた人事の課長が何を出し、その資料に何が残っていないのかを見ていきます。

報告資料が整うほど分からなくなること

例えば、設備工事とプラント建設を手がける従業員1,500名規模の企業で、人事部の課長が技術営業向けの顧客接点づくりの研修を終えたところだとします。引き合いから受注までに数か月から数年かかる案件を抱える会社です。経営会議では、あの研修は何につながったのかと問われます。

手元にあるのは、受講率と満足度4.3点という数字です。人事は全ての研修で同じ満足度アンケートを取り、受講率と平均点を一覧にして経営会議に出しています。集計が早く、他の階層別研修と並べられ、資料としての体裁が整うため、限られた時間のなかでは自然な選び方になります。

同じころ、現場では別のことが起きています。施工管理の経験を持つ技術営業が、施主との設計変更の協議に臨みます。施主とは、工事を発注する側の事業者を指します。工法と概算金額までは、これまでの経験でよどみなく説明できます。ところが施主が運用コストや保守体制の話に踏み込むと、要望を整理して対応範囲を示すところまで届きません。「確認して後日回答します」と言って、その場を持ち帰ります。

この出来事は、満足度4.3点という報告のどこにも表れません。研修が足りなかったのか、そもそも研修で扱っていない話だったのか、資料を見ても判断がつきません。人事が次に何を厚くすべきかの手がかりが、報告資料には残っていないわけです。工期が迫れば研修後の面談も後回しになり、受注が決まるのは1年以上先になります。この4.3点は、協議の場で何が起きたかについて、何を教えてくれるでしょうか。

数字が意味を持たなくなる分かれ目

では、なぜ資料が整うほど中身が薄くなるのでしょうか。研修が終わった後に何を見るかが定まらないのは、この会社だけの事情ではありません。人材開発の担当者に尋ねた調査では、研修の効果を検証する際に満足度を確かめている企業が6割を超えると報告されています(*1)。研修を企画する立場の人が回答した調査です。

一方で、職場での行動の変化まで見ている企業は半数に届かないという結果も、同じ調査に出ています。そこから、研修が終わった時点までは追えていても、その先の現場での様子は多くの会社で空白のまま残っている、と読み取れます。

ここで効いてくるのは、測定の手間ではありません。目的も対象も違う研修の数値を同じ列に並べ、高いか低いかで比べる扱いのほうが関わっているのかもしれません。新人研修も管理職研修も技術営業向けの研修も、同じ設問と同じ尺度で聞けば、点数はきれいに並びます。ただ、並んだ数字が答えているのは、受講者がその場をどう感じたかまでです。

そして、案件が数か月から数年かけて進む設備工事では、受注という結果が出るまでの途中に何を見るかを決めていません。そのため、研修の効果を測って見えるようにしようとしても、手元に残る数字が満足度だけになりやすいところです。

成果の証明ではなく確かめたい局面から考える

同じ列に並べる扱いをいったん手放すとして、では研修から出てくる情報は何として扱えばよいのでしょうか。ここからは、案件の進み方の側から情報を読む捉え方を差し出してみます。

案件が進む過程のなかには、ここを越えられれば次に進むと言える区切りがあります。これを確かめたい局面と呼ぶことにします。研修から出てくる情報を、その区切りに紐づけて読む捉え方です。研修の数値を全社共通の成績表として一列に並べるのではなく、この情報はどの局面を確かめるために存在するのか、と問い直してみるとどうでしょう。問い直した時点で、数字の意味が定まってきます。

設備工事やプラント建設のように案件が長い分野では、受注という最終結果を待つあいだに、確かめられる局面が途中にいくつも存在しています。網羅的な測定の枠組みを作ろうという話ではありません。長い案件を扱う人事が、判断材料を手元に残すための整理として使える見方です。

施主との設計変更の協議で技術営業が持ち帰った場面も、この見方に立つと違って見えてきます。成果が出なかった事例ではなく、運用コストや保守体制まで話を広げる局面で詰まった、という情報として読めます。同じ出来事が、担当者を責める材料から、次の研修で何を厚くするかを決める材料に変わります。

一般的な効果測定の考え方と分かれるのは、確かめる区切りを研修の側ではなく、案件の進み方の側に置くところです。引き合いから受注までにかかる期間が年単位に及ぶ設備工事では、研修の直後と受注の時点だけを見ていても、間が空きすぎます。だからこそ、途中の局面に手がかりを置く余地が出てきます。

なお、研修の効果を満足度、理解度、職場での行動、業務成果という段階に分けて見る考え方は、1959年にドナルド・カークパトリックが提唱して以来広く知られています。確かめたい局面という捉え方は、この段階分けを自社の案件の進み方に沿って置き直したものにあたります。

案件の進み方に沿って確かめる場所を決める

捉え方が決まると、次は自社の案件のどこに区切りを置くのかという話になります。ここからは、営業部門の管理者と一緒に手を動かすところまで降りていきます。

案件の区切りを現場の言葉で書き出す

まず、営業部門の管理者と2時間ほど時間を取ります。引き合いから受注までの進み方を4つから6つの局面に分け、それぞれで営業担当が何をできていれば次に進むのかを、現場の言葉で書き出していきます。

設備工事であれば、施主の事業計画と運用コストの前提を聞き出す局面、工法と概算を示して反応を確かめる局面、設計変更の要望を整理して対応範囲を提示する局面、工期と安全品質の条件を合意する局面、といった区切りになります。ここで書き出す言葉は、営業担当が実際に口にしている言い回しをそのまま使います。現場の言い回しのまま書き出しておくと、後で上司が現場で確かめるときに判断に迷いません

局面ごとに見る手がかりを1つに絞る

次に、局面ごとに上司が現場で見る手がかりを1つだけ決めます。要望を整理して対応範囲を提示する局面なら、「持ち帰らずに、その場で対応できる範囲と難しい範囲を分けて伝えられたか」という1点に絞ります。そのうえで、同行や報告のついでに確かめられる形にしておきます。

1点に絞るのは、育成に回せる余力が現場にそう多くないからです。全国の事業所に尋ねた調査では、能力開発の課題として指導する人材が不足していると答えた事業所が59.5%にのぼると報告されています(*2)。事業所の担当者が、あてはまる課題を選ぶ形で答えた調査です。人材育成を行う時間がないという回答も多く挙がっており、建設業では技術やノウハウの伝承に時間がかかるという課題がとくに目立ちます。

全ての研修に同じアンケートを配る従来のやり方と比べると、最初の書き出しに数時間かかります。その代わり、その後は局面ごとに1点ずつ見るだけで済みます。工期が逼迫している時期でも続けられる分量に収まる形です。

受注を待たずに次の一手が決まる

局面ごとに1つだけ決めた手がかりを、半年ほど見続けたとします。人事の手元には、どの局面で持ち帰りが起きやすいかという分布が残っていきます。数えているのは点数ではなく、案件が止まった場所です。

経営会議に出す資料も、満足度4.3点という一行から、要望を整理する局面で詰まる案件が多いため次の研修ではそこを厚くする、という説明に変わりうるものです。満足度を並べていたときには届かなかった、次に何を変えるかという判断が、受注の結果を待たずにできるようになるという可能性が広がります。

この組み立てが営業で回り始めると、施工管理や保守運用のように顧客と接する他の職種にも、同じやり方で局面と手がかりを置き直せるという視点が開けるでしょう。案件の進み方に沿って確かめる発想は、職種が変わっても持ち込みやすいものです。

工期の逼迫で研修後の面談が後回しになるという事情も、ここで形を変えます。確かめる対象を局面ごとに1点へ絞れば、同行や日常の報告のなかに収まる負担になります。案件が長く成果が見えないという事情も同じです。途中の局面に手がかりを置くことで、待つ時間が観察できる時間に変わっていきます。

局面ごとの練習をAIビジネストレーニングで積み重ねる

局面ごとに手がかりを見る運用が回り始めると、次に足りなくなるのは練習の機会です。詰まりやすい局面が分かっても、そこで話を広げる練習を積む場がなければ、分布は同じ形のまま残ります。現場に出ている時間が長い技術営業に、その練習の場をどう用意すればよいのでしょうか。

局面ごとの対応を練習する手段としては、集合研修でのロールプレイ、eラーニング、上司が同行して現場で教えるOJTが使われてきました。集合研修は同じ日に人を集める形なので、日程調整の負担が大きく、反復の回数が限られます。eラーニングは知識の確認に向く一方で、対話の練習はしにくいところがあります。OJTは実際の案件のなかで学べる反面、指導する側の時間と力量に左右されます。

株式会社アーテリジェンスが提供するAIビジネストレーニング「ミチビカ」は、ケースストーリーを読んだうえでAIを相手にロールプレイを行い、その場で振り返りと助言を受ける形で進みます。施主が運用コストの不安を口にする場面や、設計変更の要望が次々に足される場面を、局面ごとのケースとして何度でも練習できます。営業部門の管理者と書き出した局面と、そこで見ると決めた手がかりに対応する練習の場を、そのまま用意できるわけです。現場常駐と移動が多く、同じ日程に人を集めにくいという事情に対しても、受講期間内であれば各自の都合で取り組める形になっています。

当社が受講半年後に受講者の上司へ行ったアンケートでは、研修後の行動に変化が見られたとの回答が83%を超えていました。受講者本人の自己申告ではなく、上司による評価で、業種や研修テーマを限定しない全体の集計です。上司が確かめるというこの仕組みは、局面ごとの手がかりを見る運用と重ねやすく、人事の手元に判断材料を残す方向に働く可能性があります。

ロールプレイは音声を使うため、静かな受講環境が必要になります。その一方で、既存の営業マニュアルやケースを取り込み、自社の案件に合わせたカリキュラムへ作り替えるカスタマイズに対応しています。規模の大きい企業でも、同じ期間に同じ内容を進める受講グループの単位で運用できます。期限を区切って同じメンバーで進める形です。

練習の記録が局面ごとに残れば、どの局面をもう一度扱うかという判断も、人事の側で立てやすくなります。顧客接点づくりを扱うセールス研修のコースは、営業研修を実施しているものの、効果の説明材料が満足度しかないという状態の人事部に向いています。自社の案件の進み方に合わせて、どの局面で何を確かめるかを一緒に組み立てるところからご相談いただけます。研修の内容と効果の見方をあわせて設計したい場合は、資料をご覧ください。

明日の会議に持っていく1枚

ここまで見てきて効いたのは、研修から出てくる情報を成果の証明として読むのをやめ、案件のどの局面を確かめるためのものかという位置づけで読み直したことでした。手元に残るのは、新しい指標ではありません。営業部門の管理者と一緒に書き出した案件の局面の一覧と、局面ごとに1つだけ決めた手がかりを書いた紙です。数字を並べ直す作業から離れて、自社の案件の進み方に沿って何を確かめるかを組み立てる側に立つ。そこまで来れば、経営会議で問われたときに答える言葉が手元にあります。

人事の課長は、次の経営会議に満足度の一覧ではなく、局面の一覧と、要望を整理する局面で持ち帰りが起きた件数を持っていきました。設計変更の協議で持ち帰った技術営業のほうは、対応できる範囲と難しい範囲をその場で分けて伝える練習を繰り返しました。次の協議では、施主の運用コストの前提を聞き取ったうえで、判断が要る箇所だけを持ち帰る形に変えています。上司はその1点だけを同行のついでに確かめ、報告の欄に短く書き残しています。

まずは営業部門の管理者を1人つかまえて、自社の案件がどこで区切れるかを一緒に書き出すところから始めれば、次の報告資料の中身は変わっていきます。長い案件のなかで人を育てる仕事は、結果が見えるまでの時間が長い分だけ、続けるのに骨が折れます。ぜひこの記事でご紹介した進め方は、人材育成の現場でご活用いただければ幸いです。自社のスタイルに合った研修やトレーニングをお探しの場合は、いつでもご相談ください。

参考にした調査・資料

監修:株式会社アーテリジェンス

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