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情報通信業のハラスメント防止を研修の回数ではなく場面から組み直す

業界別活用法11
著者: アーテリジェンス編集部
情報通信業のハラスメント防止を研修の回数ではなく場面から組み直すの内容を表すビジネス研修のイメージ

# 情報通信業のハラスメント防止を研修の回数ではなく場面から組み直す

最終更新日:2026年9月17日

情報通信業の人事部が担うハラスメント防止の範囲は、この数年で規程の整備から先へ広がってきました。人的資本経営の広がりを受けて、働く人が尊重される職場をつくれているかどうかは、情報開示や取引先からの確認を通じて、外から見られる対象になっています。ハラスメント防止はもう、規程を整えて周知した段階では収まりません。日々の職場のやりとりそのものが問われる領域へ移っています。

多くの人事部は、全社員向けの受講を短期間でやり切っています。完了率という数字は手元にあり、経営にも取引先にも実施を説明できます。受講は終わったのに、現場の空気は変わったのでしょうか。それでも現場から返ってくる手応えは薄く、結局何が変わったのかという問いには答えにくいままです。ハラスメント防止の研修を、風通しのよい職場づくりへもう一歩進めたいと考えている人事・人材育成の担当者にとっては、ここが次の一手の見えにくいところになります。

それでは、情報通信業のハラスメント防止をどう組み直せるのか、学習手法の選び方と運用の設計という観点から探っていきましょう。

この記事の要点

  • 情報通信業のハラスメント防止は、受講を終えたかどうかでは測れない領域に入っている。
  • 手法を選ぶ前に何を変えたいのかが決まっていないと、どの手法を選んでも目的とずれる。
  • 手法そのものの良し悪しを比べる前に、変えたい状態の側から研修の組み方を見直す道がある。

ハラスメント研修が形骸化する原因はどこにあるか

完了率は手元にあるのに手応えが薄いという状態は、事案の直後に何が起きたのかをたどると形が見えてきます。ここからは、実施が一律の形に落ち着いていく経緯と、そこで抜け落ちるものを順に追っていきます。

なぜ全員一律の実施に落ち着くのか

社内で人権やハラスメントに関わる事案が起きると、人事はまず全社員向けのeラーニングと管理職向けの集合研修を短期間で組みます。受講率を確保するために、視聴時間の短い教材と一斉配信が選ばれます。期限内に全員へ届いたという事実は確かに残り、経営にも取引先にも実施を説明できます。では、なぜ実施は毎回この一律の形に落ち着くのでしょうか。

番組やコンテンツの制作現場では、放送局の社員、制作会社のスタッフ、フリーランスの技術者が同じ場で働き、社内の指揮系統と会社どうしの発注関係が重なって動いています。撮影と編集はプロジェクトごとに繁閑が動くため、同じ時間に全員が集まれる日はほとんどありません。所属も勤務リズムも揃わないなかで、期限までに全員へ届く方法を探すと、選べる形は自然と限られていきます。

例えば、受講が終わった翌週の撮影初日の顔合わせです。社員のディレクター、制作会社で撮影の段取りを回すアシスタントディレクター、フリーランスの技術スタッフが、同じ場に立ちます。短い納期と発注関係のなかで、行き過ぎた言い方に気づいても、言い直しを促す一言は出てきません。深夜の編集フロアでも同じことが起きます。手が足りず声も荒くなる時間帯に、その場にいる誰かが空気を戻す一言を差し出せるかどうかは、教材の外側に置かれたままです。教材で見た禁止事項の一覧は、その場で誰が何を言うかまでは示してくれません。

知識の不足と場面の不足はどこで分かれるか

一言が出ないのは、知識が足りないからでしょうか。過去3年間にパワーハラスメントの相談があった企業は64.2%にのぼるという調査結果が報告されています (*1)。企業に尋ねた調査で、特定の業種に限った数字ではありません。そこから、相談が上がるような場面は制作の現場にも日常的にあると読み取れます。何が禁止なのかを知らないというより、その場面での言動そのものが扱われていないところに、行き詰まりの位置がありそうです。

人事が手にしている指標が受講の完了である限り、手法は全員に同じものを短時間で届けられるかどうかで選ばれます。つまり、変えたい言動の側からは手法が選ばれていないという状態です。職種も雇用形態も勤務リズムも違う人たちを一つの実施方法にまとめた時点で、目的は現場の言動を変えることから、期限内に届けることへすり替わっていきます。

研修は回数ではなく場面で数える

目的が届けることにすり替わる地点をずらすには、研修の数え方そのものを入れ替えるところから手をつけられます。ここからは、その数え方と、そこから見えてくるものを順に見ていきます。

研修を実施の回数や形式で数えるのをやめ、現場のどの場面を引き受けるのかで数えてみると、どうでしょうか。この見方をこの記事では「場面で数える」と呼ぶことにします。学習手法を施策そのものとして扱うのではなく、目指す状態へ近づくための要素の一つとして位置づける、焦点の置き方です。場面で数えると、eラーニングも集合研修も現場での対話も、引き受けられる場面の種類が違うだけの、横並びの選択肢として並びます。手法の優劣を比べる話が、どの場面に誰の手も届いていないのかを探す話に変わっていきます。

撮影初日の顔合わせを1場面として数えてみます。すると、全社員向けの配信教材はその場面の前提を揃えるところまでしか担っておらず、その場で言い直しを促す一言は、誰も練習していないことが見えてきます。届いていない場面の数だけ手法の空白がある、という見方もできます。

この数え方が効いてくるのは、制作現場の立ち方そのものに理由があります。正社員、制作会社のスタッフ、フリーランスが同じ場に立ち、指揮系統と発注関係が重なるため、誰に受けさせるかで線を引くと、場面そのものが所属ごとに分断されてしまいます。場面から数えれば、所属をまたいで同じ場面に立つ人たちを1つの単位として扱えます。

数え方の置き場所は、効果を測る側にも現れます。研修の効果検証では受講者本人へのアンケートが最も多く、7割強を占めるという調査結果が出ています (*2)。企業の研修担当に尋ねた調査です。

同じ調査では、職場での行動の変化まで積極的に確認しているのは45.5%にとどまると報告されています。そこから、測る対象が受講した本人の実感の側に寄りやすいと読み取れます。何回実施したかと、受講した人がどう感じたか。この2つで研修を数えている限り、現場の場面は数のなかに入ってきません。

変えたい一言を決めてから手法を割り振る

手法の空白を探すという見方は、どの空白から埋めるのかを決める作業と対になります。ここからは、変えたい一言を決めて、そこから手法を割り振るまでの手順をたどります。

変えたい場面を3つまでに絞る

まず、この半年で変わってほしい場面を3つまで挙げます。数を絞るのは、全部の場面を同時に引き受けようとすると、また全員一律の配信へ戻ってしまうからです。そのうえで、その場面で誰が誰に向けてどんな一言を言えるようになればよいかを、実際のせりふの水準まで書き出します。「気をつける」「配慮する」といった方針の言葉では、現場で口から出る形になりません。

場面ごとに練習の場を割り振る

次に、その一言に必要なものを、前提の共有、判断、言い方、言ったあとの後始末の4つに分けます。前提の共有は短い教材で足ります。判断と言い方は繰り返しの練習が要ります。後始末は、相談窓口への連絡や上長への引き継ぎの手順として置きます。どの手法を選ぶかではなく、4つのどれをどの手法に割り振るかという順番になります。

撮影初日の顔合わせであれば、「いまの言い方は演者に伝わりにくいので、こう言い換えませんか」と、立場が下の側から言い直しを促す一言が練習の対象になります。うまくいくかどうかは、相手を否定せずに次の行動を示す形になっているかどうかで分かれます。ですから、同じ場面を何度か言い直して、言葉の並びを自分の口に馴染ませておく必要があります。頭で分かっていても、その場で出てこなければ場面は変わりません。

この練習のために、新しい研修を立てる必要はありません。すでに配信している教材の後ろに、場面ごとの言い直しと振り返りを足す形で足ります。1場面あたり数十分で回せる分量なので、年間の研修計画を組み替えずに始められる形が考えられます。

振り返りで何を返すかにも、置き方があります。人そのものへの評価ではなく、行動と次の一手に焦点を当てた助言のほうが受け入れられやすいと、一般にされています (*3)。人柄や姿勢の話ではなく、言い方の並びについて返す。そう決めておくと、練習の場が評価の場に変わってしまうことを避けられます。

ハラスメント防止が現場の言動として残るまで

配信教材の後ろに練習と振り返りを足した先で、現場の何が変わっていくのか。ここからは、続けた場合に見えてくる範囲を追っていきます。

変えたい場面を絞って練習を重ねると、撮影初日の顔合わせや深夜の編集フロアで、立場が下の側からでも言い直しを促す一言が出るようになっていきます。すると、その場で止まる出来事が増えていきます。人事の手元に集まるものも変わります。受講が終わったという記録ではなく、どの場面でどんな言い方が使われたかという具体が残っていきます。一斉配信で完了率を積み上げていたときには届かなかった、現場での言動が変わることに手が届きはじめる、という可能性が広がります。

所属によって受講の枠組みが揃わない、という事情はどうなるでしょうか。正社員と制作会社のスタッフ、フリーランスでは、受講を義務づける根拠も費用の出し方も別になります。この事情も、場面を単位にすれば、同じ場面に立つ人へ同じ練習を配るという形に整理できます。誰に受けさせるかの線引きより、どの場面を空けておかないかを先に決められる、という順番の入れ替えになります。

この数え方は、顔合わせや編集フロアだけで終わるものではありません。発注時のやりとりや、相談を受けたときの初動といった別の場面にも、そのまま当てられます。次はどの場面を引き受けるか、という順番の相談に進めるようになるでしょう。

何度でも練習できる場をつくるAIビジネストレーニング

現場の言動が変わりはじめるところまで来ると、その練習は何が支えるのでしょうか。言い直しの練習には、相手役と回数が要ります。ここで、これまで使われてきた手段がどの場面に向き、どの場面に届きにくいのかを並べてみます。

集合研修は、議論と合意形成に向いています。互いの受け取り方の違いをその場で確かめられる場面では、代わりが利きません。一方で、不規則なシフトのなかで同じ時間に全員を集めるのは難しく、集まれたとしても一人あたりの練習回数は限られます。eラーニングは時間を選ばず大人数に届き、前提の共有には適しています。ただ、一方向に流れる形なので、言い方を試して直す場にはなりにくいところがあります。

4章で挙げた、言い直しを促す一言の練習は、相手役と回数の両方が要ります。人を集める形では、必要な量を確保できません。株式会社アーテリジェンスが提供するAIビジネストレーニング、ミチビカは、ケースストーリーを読んだうえでAIを相手に同じ場面を何度でも言い直し、その場で助言を受けられる仕組みです。人を相手にしては再現しにくい厳しいやりとりも扱えます。深夜や早朝しか空かない人、拠点や現場が散らばっている人が、期間内に各自の時間で同じ場面に取り組める点も、同じ時間に集まれないという事情への答えになります。

受講半年後に受講者の上司へ行ったアンケートでは、現場での言動が変わったとの回答が83%を超えていました。当社が測ったもので、本人の自己申告ではなく上司による他者評価であり、今回の業種やテーマに限らない全体の集計です。

集合研修との比較では、80%以上がAIビジネストレーニングのほうが優れている、または希望すると回答しています。こちらも当社の調べによるものです。同じ場面を繰り返し練習できる形は、制作の現場でも言動の変化につながる可能性があります。

運用の面では、音声でのやりとりを含むため、静かな受講環境が要ります。期間内であれば自宅や個室ブースから各自の時間で受講できるので、シフトの合間に進める形をとれます。受講する集団ごとに期限を設定でき、進み具合も一覧で見られるため、人事は誰がどこまで進んだかをその場で把握できます。

全社員向けであれば、定額版コンプライアンス研修のうち、パワーハラスメント防止と適切な指導基礎や、ジェンダー・ハラスメント防止基礎が、配信教材の後ろに場面ごとの練習を足したい人事部に向きます。どの場面から引き受けるかは、社内で書き出した場面の一覧を見ながら決めていく部分です。変えたい場面をまだ絞り込めていない段階でも、現在の研修の組み立てを見ながら、どの場面にどの手法を割り振れるかを一緒に整理します。資料請求と個別相談を承っています。

風通しは次の現場の一言から変わる

練習の回数を確保できる手立てまで見てきました。ここまで読み進めていただいたぶん、手元にある材料は増えているはずです。

この記事で効いたのは、研修を実施の回数ではなく現場の場面で数えるという1点でした。完了率を積み上げる話から、どの場面を空けておかないかを決める話へ、立ち位置が移ります。手元に残るのは、変えたい場面を3つ書き出した紙と、そこで言えるようになりたい一言、そして練習のたびに直した言い回しの記録です。

人事の人材開発担当者は、全社員への一斉配信を前提の共有に絞り、撮影初日の顔合わせを最初の1場面として練習を組み直しました。その後の現場で、社員のディレクターは、フリーランスの技術スタッフが強い言い方をされた場面に立ち会います。周囲に人がいるなかでも、「その言い方だと伝わりにくいので、こう言い換えませんか」と切り出し、やりとりの事実をメモに残して、翌日プロデューサーへ引き継ぎました。制作会社のアシスタントディレクターも、同じ場面の言い方を練習したうえで現場に入っています。同じ場に立つ人が、同じ一言を持っている状態です。

明日の現場で変えたい一言を1つだけ決めて書き出すところから、ハラスメント防止は動きはじめます。3つの場面をそろえるのは、そのあとでも構いません。ぜひこの記事でご紹介した実践の手立ては、人材育成の現場でご活用いただければ幸いです。自社のスタイルに合った研修やトレーニングをお探しの場合は、いつでもご相談ください。

参考にした調査・資料

監修:株式会社アーテリジェンス

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