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食品飲料メーカーの営業研修が現場で続かない理由は参加を支える側にある

業界別活用法11
著者: アーテリジェンス編集部
食品飲料メーカーの営業研修が現場で続かない理由は参加を支える側にあるの内容を表すビジネス研修のイメージ

# 食品飲料メーカーの営業研修が現場で続かない理由は参加を支える側にある

最終更新日:2026年8月31日

小売の統合が進み、店頭の売場をめぐる交渉は年々厳しくなっています。食品・飲料メーカーでは、価格だけに寄らない提案ができる営業を育てることが人材育成の重点に上がってきました。その手段として、顧客の課題を聞き出すコミュニケーション能力を鍛える営業研修を企画する人事部が増えています。

ところが研修を実施した後、支店から「よい内容だった」という反応は返ってくるのに、商談の進め方が変わったという話までは上がってこないことがあります。受講率は前年より上がっているのに、次年度も同じ研修を同じ形で提案することになる。この繰り返しに心当たりのある担当者は少なくないはずです。数字の上では前進しているのに、現場の商談だけが以前のままという状態は、企画の中身がよくなかったからとも言い切れません。それでは、学んだ対話が使われないまま終わる理由がどこにあるのかを、参加を支える側の事情から探っていきましょう。

この記事の要点

  • 受講率が上がっても現場で使われない状態は、受講者の意欲の高低とは別のところで起きている。
  • 食品・飲料メーカーの営業支店には、学んだ対話を持ち帰る先が用意されにくい事情がある。
  • 参加を個人の出欠ではなく、研修の意味をつくる人と受け止める人まで含めた役割の連なりで見ると、次の企画で手を入れる場所が具体的に決まる。

受講率は上がったのに商談が変わらない支店で起きていること

同じ内容を同じ運びで回している状態は、支店の側から見るとどう映っているのでしょうか。ここでは、受講率が上がった後の支店で何が起きているのかを、営業の働き方の事情から順にたどります。

例えば、加工食品と飲料を扱うメーカーで、営業本部と人事が共同で、スーパーマーケットなどの小売チェーンを担当する営業の若手に向けて、顧客の重点課題を掘り下げる顧客接点づくりの研修を企画するとします。狙いは、価格の交渉に寄りがちな商談を、相手の課題を聞く対話へ近づけることです。ここで前提になるのが、この仕事の担当範囲の広さです。食品・飲料メーカーの営業は商談だけを担っているわけではなく、店頭の売場の欠品確認、賞味期限の管理、返品処理までが範囲に入ります。どれも日付に縛られるため、他の予定より先に処理されやすい業務です。決まった取引先を定期的に回る営業では、朝から取引先を回ってそのまま直帰する日も多く、支店に人がそろう時間はもともと限られています。

督促で数字は動く

受講率が思うように上がらないとき、人事は対象者を一律に必須化し、募集とリマインドを重ね、未受講者の一覧を支店長へ送って督促します。この方法は確実に数字を動かしますし、経営や営業本部に対して「対象者への提供は完了した」と説明できる状態をつくれます。同じ運びを選ぶ会社は多く、それだけ結果の見えやすいやり方でもあります。

督促を受けた支店のマネジャーは、繁忙期の訪問計画を組み替えて、受講の半日を空けます。空けた時間の分だけ訪問は後ろに寄るので、受講者が戻った日は店頭の欠品対応と返品処理から再開することになります。研修で扱った顧客の重点課題を話し合う時間は、そこには残りません。受講率の一覧では9割まで届いているのに、支店の1週間は研修の前と変わらないまま進む。

学びを持ち帰る先が空いている

学びが進まない理由をたずねた調査では、「学びの必要性を感じていない」「周囲や上司に学びを阻害されている」といった答えが一定の割合を占めたと報告されています(*1)。督促を強めることで動くのは前者の一部で、後者にはまた別の手当てが要りそうです。

原因は、時間や人手が足りないことそのものではないのかもしれません。学んだ対話を持ち帰る先が、誰にも割り当てられていないところから始まっている、と読むこともできます。支店のマネジャーが別の経路で育ち、研修で使われた言葉を共有していない場合、受講者が新しい聞き方を試そうとしても、その試みを受け止めて次につなげる人が支店にいない状態になります。試した結果を話す相手がいなければ、聞き方は1回で終わり、翌週には元の商談の型に戻ります。

受講した若手が支店で最初の1回を試すとき、その話を聞く相手は誰でしょうか。この問いの答えが決まらないまま、必須化と督促だけを年ごとに強めていくと、支店に積み上がるのは受講済みの記録と、使われなかった聞き方の蓄積です。研修の中身を入れ替えても、持ち帰る先が空いている限り、翌年の結果は同じ形になりやすいところです。

参加を支える役割の連なりという見方

持ち帰る先が空いたままなら、参加という言葉が何を指してきたのかを、いったん取り直してみる価値があります。ここでは、出欠の数え方とは別の眺め方を1つ置いてみます。

研修への参加を、受講者1人の意思としてではなく、3つの役割がつながった状態として捉えてみるとどうでしょう。研修の意味をつくる人、受講の時間を空ける人、戻ってきた実践を受け止める人。この記事では、この3つのつながりを参加を支える役割の連なりと呼ぶことにします。3つが誰に割り当てられているかを書き出すと、参加という言葉が指していた範囲は一気に広がります。人事が普段見ている受講率は、このうち時間を空ける役割が機能したかどうかだけを映した数字です。だとすれば、企画の段階でこの連なりを1枚に書き出しておく、という進め方も考えられます。

この見方で先ほどの支店を眺め直すと、受講率9割という数字の意味が変わります。時間を空ける役割だけが督促によって埋まり、意味をつくる役割と受け止める役割は空席のまま研修が回っていた、と読めるからです。受講者が動かなかったのではなく、動いた先に誰も立っていなかったという景色になります。

受講率を上げる工夫や事前案内の改善は多く語られます。そこでは、意味をつくる相手が人事から受講者本人へ直接向かうことが前提に置かれています。ただ、量販営業のように、顧客との関係が支店のマネジャーを介して積み上がる仕事では、意味をつくる役割と受け止める役割の両方が支店側にあるかどうかで結果が分かれます。その2つを名指しできるという点が、実務では効いてきます。

学んだことが職場で使われることについては、1988年にBaldwinとFordが整理した枠組みが知られています。そこでは、成果が受講者の特性、研修の設計、職場の環境という3つに関わるとされます(*3)。役割の連なりという見方は、このうち職場の環境を、人事が企画時に書き込める形に置き直したものとして重なります。

意味と受け止めを企画の手順に組み込む

空席の場所が見えたら、次に決まるのは誰がそこに座るかです。手順は3つあり、いずれも新しい制度をつくるものではありません。いま使っている企画の手順に、順序を1つ足すだけで動きます。

対象者を決める前に重点顧客を1件そろえる

まず、対象者を確定する前に、支店のマネジャーと1回だけ時間を取ります。その支店の重点顧客を1件選んでもらい、「この顧客との対話をどう変えたいか」を言葉にしてもらう時間です。募集案内の文面を練り直すより、先に1件の顧客を決めるほうが、研修の意味は支店の側で立ち上がります。ここで出てきた言葉は、そのまま受講者への説明にも使えます。

もうひとつは、受講後に持ち帰る実践の粒度を下げることです。意欲や心構えではなく、「その重点顧客との対話を1回行い、直後に15分だけマネジャーと振り返る」という動作まで下げます。ここまで具体にすると、受け止める側も何をすればよいかが分かり、引き受けやすくなります。自社の企画で組めるかどうか、この2つの手順から見積もってみてください。

実践の窓を商談カレンダーから先に取る

最後に、その振り返りを置く日を、繁忙期を避けて商談カレンダーの側から先に押さえます。研修の日程表ではなく商談の予定の側から取るところが、これまでとの分かれ目です。

飲料を扱う支店であれば、夏の販促の詰めが終わった時期に実践の窓を置きます。若手は小売側の仕入れ担当者と会い、店頭の課題を1件だけ深く聞く場をつくります。マネジャーは同席しません。戻ってきた15分で「何を聞けて何を聞き損ねたか」だけを確認し、評価はしない形です。同席して指導すれば話は早いように見えますが、それでは若手が自分で聞く回数が増えません。1件目の重点顧客で手応えが出た支店から、2件目を足していく進め方にすると、繁忙の波に飲まれずに続けられます。

上司や同僚の支援が研修後の実践と関わっているという研究結果も報告されています(*2)。受け止める役割を先に決めておくことには、そうした裏づけもあります。

受講率ではなく実践の回数で研修を語れるようになる

重点顧客を1件そろえ、実践の窓を先に取る運びを何度か回した支店では、何が変わるでしょうか。受講者は支店に戻ったとき、話を聞いてもらえる相手を持った状態になります。学んだ聞き方を試す最初の1回が生まれやすくなるでしょう。マネジャーの側も、督促を受け取る立場から実践を受け止める立場へ位置づけが変わるため、研修を人事から降ってくるものとして扱いにくくなります。必須化とリマインドをどれだけ重ねても届かなかったのが、受講者が支店に戻った後の1週間でした。そこに初めて手が届く形になります。

1つの支店で実践の回数が積み上がると、その記録は次の支店に持っていける具体例になります。意味づくりの対話を支店ごとに一から繰り返す手間も、少しずつ軽くなるはずです。そこまで進めば、同じ設計を中堅層や、商品開発との連携場面へ広げるという可能性も見えてきます。人事の手元にある材料も、受講率の一覧から、どの顧客との対話が何回試されたかという記録に変わります。

支店のマネジャーが研修の言葉を共有していない、という事情もありました。これは、受講前の対話で重点顧客を1件そろえる過程そのものが共有の場になるため、別の施策を足さずに解けます。繁忙期になると実践の相談が後回しになるという事情も、窓を商談カレンダーの側から先に取っておけば、後回しの判断が起きる前に場所を確保できます。

対話の練習量を支店の負担にしない手段

実践の回数が積み上がってくると、次に効いてくるのは、その1回の質を支えるだけの練習をどこで積むかという点です。繁忙と直行直帰は、練習の時間をいちばん削りやすい条件でもあります。

集合研修は、支店を越えて言葉をそろえる場としては有効です。一方で日程調整の負荷が大きく、1人あたりの練習回数は限られます。eラーニングは時間の自由が利きますが、直行直帰の移動中に他の作業をしながら流されやすく、対話の練習には向きにくいところがあります。どちらも場面が限られるだけで、使い道がないわけではありません。

株式会社アーテリジェンスが提供するAIビジネストレーニング、ミチビカは、小売側の仕入れ担当者との対話をケースストーリーとして読み込み、AIを相手にしたロールプレイで何度でも練習できる仕組みです。重点顧客との対話を1回行うという実践の手前に、練習の回数を差し込めます。受け止める役割を担うマネジャーが、練習相手まで兼ねる必要がなくなるという点が、支店にとっての違いです。深夜や移動の合間でも取り組めるので、繁忙期に確保した実践の窓を守りやすくなります。

ミチビカでは、受講半年後に受講者の上司へ行ったアンケートで、行動が変わったとの回答が83%を超えていました(当社調べ)。当社が受講者本人ではなく上司にたずねた集計で、業種や研修テーマを限定していない全体の数字です。他者からの評価である点で、受け止める役割が働いたかどうかを映す指標としても読めます。

音声を扱うため静かな受講環境が必要になりますが、自宅や個室からのアクセスで対応できます。支店の既存の営業マニュアルをケースに取り込むカスタマイズにも応じられます。練習の回数を先に積んでおけば、支店で持つ15分は、聞き損ねた点を言葉にする時間としてそのまま使えます。顧客接点を扱うセールス向けのコースは、受講率は上がったのに商談の進め方が変わらないという手応えをお持ちの人事部に向く内容です。支店の受け止め役まで含めた研修設計のご相談を承っていますので、セールス向けコースの内容と導入事例の資料もあわせてご覧いただけます。

次の企画で手を入れる場所

練習の場を外に持てるようになると、支店に残る仕事は、実践を受け止める15分にしぼられます。ここまでで効いたのは、参加を個人の出欠ではなく、役割のつながりとして見た1点だけでした。手元に残るのは、意味をつくる人と時間を空ける人と受け止める人を書き込んだ1枚、支店ごとに選んだ重点顧客の名前、そして実践を置いた日付の3つです。受講率の一覧とは別の場所にこの3つを置くところから、次の企画が始まります。

冒頭で挙げた支店では、その後どうなったでしょうか。人事の育成担当者は、次の企画で対象者リストより先に、支店のマネジャーとの30分を組みました。そこで重点顧客を1件ずつ決め、この顧客との対話をどう変えたいかを言葉にしてもらうところから始めています。若手は商談で店頭の課題を1つ深く聞き、戻ってきた15分の振り返りで、聞き損ねた点を言葉にしています。マネジャーは督促のメールを受け取る側から、その15分を持つ側に変わりました。受講率の数字そのものは、前年と大きくは変わっていません。それでも、支店で試された対話の回数は数えられるようになりました。

ここまで読み進めてくださった時間が、次の企画に少しでも役立てば幸いです。次の企画書を開いたら、対象者の欄より前に「戻ってきた実践を誰が受け止めるか」の1行を足すところから始めてみてください。1行足すだけで、同じ研修の見え方が変わります。ぜひこの記事でご紹介した手順は、人材育成の現場でご活用いただければ幸いです。自社のスタイルに合った営業研修をお探しの場合は、いつでもご相談ください。

参考にした調査・資料

監修:株式会社アーテリジェンス

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